空蝉倒壊、再制作についてのコメント

 3月20日午前10時53分。私は実家のある広島で揺れを感じ、「どこかで大きな地震があったのだろうか」とテレビのスイッチを入れた。そして数時間後、「空蝉」全壊という連絡を受け、私は大きく動揺した。

 ところで私の作品には「迷宮」という作品がある。この作品は、良いことも悪いことも含めて全てを受け入れ、そのまま形にすることで出来あがっている。(右手最奥にある塩の迷路作品)
 今回の地震はまさに予期せぬ出来事だったが、避けることのできないことと受けとめて、これを活かした作品を再びつくることにした。今の私に出来ることは、それしかない。

 地震から数日後、新しい「空蝉」は多くの人々の助けを借りて完成した。一度崩れ、再び組み上げられた塩の階段は、以前に比べて低くなり、崩壊した部分も増えた。ほんの数日の間に、数十年、数百年という歳月が過ぎ去ったかのような印象さえ受ける。
 地震による倒壊によって、私が夢見る大切な記憶の場所との距離は一時遠のいた。しかし、今回のアクシデントを経て、過去へのアプローチは容易になったように思う。
 
 今回、大きなアクシデントに見舞われたが、ふたつの「空蝉」を制作できたこと、そして福岡の街に再来できたことを、今は嬉しく思っている。
 地震によって命を落とされた方のご冥福と、被災された方々の一時も早い復興を祈って。

3月26日
山 本 基